緑に包まれた田舎の町。




全てはそこから始まった。




他人の代表 Presents








がさっ


がさっ


がさっ


すとん



てててててててて……



ぴと



孝昭「よお、佳夢。今帰りか?」


佳夢「いっしょにかえるでごんす」


孝昭「よし、帰るか」


佳夢「うんうん」




孝昭「しかし、転校してまだ大して経ってないのに、変な奴ばかりに出会ったなあ」


佳夢「うんうん」


孝昭「いや、お前は転校してきてないし、そもそもお前自体変な奴だろ」


佳夢「にゃ?」


孝昭「ていうか、お前一体何者だ」


佳夢「津音 佳夢」


孝昭「いや、名前はいい」


佳夢「おかし、すき」


孝昭「いや、んー、まあいい。どうでもいい話だ」




孝昭「しかし、いい天気だなあ」


佳夢「うんうん」


孝昭「公園でも行ってのんびりするか」


佳夢「うんうん!」




















どこに行っても緑がある───





そんな小さな田舎町のおはなし











帝 恵
みかど めぐみ
織田 瑞希
おだ みずき
帝 桜
みかど さくら
津音 佳夢
ついん かむ















「孝昭君、孝昭君ってば!」 
 突然体が揺すられる。
「……ん?」
 気がつくと、孝昭は屋根の下にいた。
 目の前には、いとこの瑞希。
 困った顔をして孝明を覗き込む瑞希がいた。
「ここは、あの日の駅……?」
 孝明が辺りを見回しながら言う。
「あの日がどの日かは知らないけど、ここは駅だね」
 瑞希は彼から離れ、首を傾けながらそう答える。
 長い髪が宙を舞う。
 それが、昔の瑞希からは想像も出来ない女の子っぽい仕草だとか、そんなことはどうでもよかった。
「帰ってきた……? そうか、俺は帰ってきたんだ! 願いが通じたんだ!」
 孝昭はやたらミュージカル調に喜びを表現した。
「……? おかえり」
 瑞希がとりあえずそう答えた。
「現実逃避してるところ悪いけど、そろそろ家に行かないと暗くなっちゃうよ」
「暗く……?」
 そう言われた孝昭が辺りを見ると、すでに夕暮れの紅い空の色だった。
「……あれ? 俺、昼過ぎにここに来たんだよな?」
「そうだよ。でもなんだか突然、動かなくなって。さすがに空が紅くなってきたから起こしたんだよ」
 瑞希が言う。
「夕方まで? なんで今まで起こしてくれなかったんだよ」
 孝昭は今まで長い間見てきたものが、ただの現実逃避だったと、やっと気付いた。
「起こしたよ、一応は。でも起きなかったし。何だか面白かったからそのままにして見守ってたんだよ」
「面白かったって、何だよ」
 孝昭が訊く。
 瑞希はくすくすと笑う。
「『自分、不器用っすから』とか『死んで、もらいやす』とか。ヤクザものの夢でも見てたの?」
「ああ、それは第三議会と対立した新塩川派が殺人工場を建設したことが発覚した辺りだな」
 孝昭は逃避してみた夢を思い出しながら言う。
「……ごめん、今の、一言も意味が分からなかった」
「つまり、第三議会は裏で長老衆をまとめ上げようとしていて……」
「いや、詳しく解説して欲しいわけじゃないよ」
 瑞希は孝昭の言葉を止める。
「ん……よいしょっ」
 そして、孝昭の荷物を持ち上げる。
「それじゃ、早く帰ろ」
 そういう瑞希の背中に赤い夕陽が輝く。
「うむ。それじゃ、ミーを案内してたもれ」
「なんか、違和感のある言い回しだね」
 そう言いながら、瑞希はすでに本当に無人駅となった駅舎を出る。
 孝昭がそれに続く。
「あ、こら、お前俺のバッグを持って行くな」
「え、ああ。孝昭君は疲れてるんだから持ってあげようかと思って」
 瑞希がバッグを振りながら言う。
「さっき十分休養は取ったんだがな」
「うん。でも、今日は持たせてよ。歓迎の証に」
 瑞希は少し嬉しそうにそう答える。
「そんな事言って、本当はかばんの中に入っている、俺の大切なセンターマン変身セットをあわよくば奪う気でいるな? か、返せ。それだけはっ」
 孝昭はバッグを奪い返す間合いを取る。
「……孝昭君が変身セットを使おうとしない限り、奪う気はないよ」
 瑞希があきれた口調で返す。
「…………よかった」
「……泣くようなことなの?」
 孝昭の嬉しそうに泣く顔が、本当に幸せそうなので、瑞希はそれ以上何も言えなかった。
 黄昏の町を二人の足音だけがあたりに響く。
「で、どうしてそんなに変わってしまったんだ?」
 孝昭は瑞希と再会した瞬間からずっと疑問に思っていたことを訊いてみた。
「いろいろとあったんだよ」
「並大抵のいろいろじゃそうはならないだろ」
 孝昭は子供の頃の瑞希を思い起こし、その変貌の大きさを思い、言った。
「うーん、そう見えるかもしれないね。でも、ボクは基本的には何も変わってないんだよ」
 瑞希は言う。
 その表情は、闇に覆われ始めた今となっては孝昭には伺うことが出来なかった。
「結構広い公園だな。何に使うんだ、こんな馬鹿でかい公園」
 公園といえば別に都会にもいくらでもある。広さで言えば都会にあるものの方が広いものが多い。
 それは人口が密集しているからで、そんな広い公園も休日になると人で満ち溢れる。
 ここは日曜にもかかわらず、ほとんど人がいない。
 そこに孝昭はとても違和感を感じた。
 違和感といえば、こういう公園には普通、遊戯具はないことが多いが、ここには少しだがそういうものがある。
「きゃん、きゃん」
「にゅあ〜……」
 例えば向こうのブランコには誰か揺られている。
「わん! わん!」
「にゃ、にゃあ〜」
 そして、こちらの滑り台では少女と子犬が遊んでいる。
「わおーん!」
「にゃあぁぁぁ」
「何をやってるんだこいつら」
 孝昭は離れたところから滑り台を見る。
 滑り台の上に少女が立っており、下には子犬がすべる部分を登ろうと走るが、滑ってうまく上れない。
「にゃぁ〜」
 少女はどうやら、その犬が上って来ようとしていることを怖がっているようだ。
 犬はじゃれあいたくて少女のところに行きたがっているように見える。
「なるほど、夫多忙による夫婦のすれ違いと同じだな」
 孝昭は意味不明の言葉を吐くと、滑り台に近づいた。
「わおん?」
 滑り台を走っていた子犬がそれに気づく。
「こっちだ、人間の下僕」
 孝昭は犬に手を振る。
「わん!」
 子犬は滑り台を捨てて、孝昭のもとへと走る。
 孝昭はしゃがんでそれを待ち受ける。
 子犬は孝昭にじゃれつき、なめる。
「あはははは、やめろよ。ふふふふふ」
 孝昭は犬とじゃれあう純朴な少年になった。
「わん! わん!」
「はははははは。こいつぅ」
 その様子は一見童顔の可愛い少年に見える孝昭にはとてもよく似合う仕草だった。
 だが、彼を知った人間なら、それが演技であることは一目で分かっただろう。
 幸いにも、ここには彼を見知った人間はいなかった。
「ははははははははは」
「わん!」
 しばらく、そんなことをしていると、犬は別の何かに気付いたらしく、走って行ってしまった。
 後に残される、孝昭と滑り台の上の少女。
 孝昭は少女を見上げる。
 歳は中学生くらいだろうか。
 長い髪にツインテールという髪型が彼女の印象をいっそう幼く見せている。
 ビクビクしながら、そこにしゃがんでいる。
「さあ、もう怖い犬はいないよ。下りておいでよ」
 孝昭のさわやかモードは続いていた。
「もう、大丈夫だよ。さあ」
 にっこり笑う孝昭。
 少女はじっと孝昭を見る。
 どうも、ただ怖がっているという感じではないようだ。
「さっさと下りてこないと、さっきの犬と同じようにこっちから上っていくぞ、この野郎」
 孝昭はさわやかに飽きた。
「……にゃ」
 少女はじっと孝昭を見続けている。
 やがて、滑り台の階段の側からとんとんと下りて来た。
 孝昭を見続けたまま、そばに歩いてくる。
「そうそう、最初からすなおに……」

 ぴと。

 少女は孝昭の腕にくっついた。
「ん? 何だ?」
「にゃ、あの、ありがとう……」
 少女は小さな声で言う。
「よく来たわね、近藤君!」
 放課後、孝昭が校舎裏に来ると、恵が腕を組んで立っていた。
 その他にも見物人と思しき人間が十数名立っていた。
「よく来たな、帝!」
 孝昭はとりあえず言い返してみた。
「え? ええ。……あれ?」
 恵が混乱して返事をする。
「瑞希を先に帰してまで来てやったんだ。ありがたく思え」
 孝昭は何故か偉そうに言う。
 瑞希の名前を出すと、恵は少しだけ表情を変える。
「ねえ、あなたって織田さんとどういう関係なの?」
 恵は先程までの勢いを消し、孝昭に訊く。
「瑞希は俺の従兄弟だ。俺の親が海外赴任することになったから、あいつの家に住む事になったんだ」
「ふうん……」
 恵が孝昭を見ながらつぶやく。
「で、決闘するなら早くしてくれ」
「え? あ、うん、そうね、決闘ね。後悔しないわね?」
 恵ははっとして答える。
「しないから早くしろ。で、何で決闘するんだ? 殴りあうわけじゃないんだろ?」
「え? あ、当たり前じゃないの! 決闘はね……」
 そこまで言うと、恵は動きを止める。
「何だ?」
「ちょ、ちょっと待ってなさいよ。今から言うんだから……えっと……その、あれよ、あれ」
「あれ?」
 孝昭が聞き返す。
「そう、あれ……あれよ」
 恵があせりながらそう答える。
「…………」
「…………」
 孝昭はため息をついた。
「考えてなかったんだな」
「違うの! 忘れただけなの!」
 涙目で訴える恵に、孝昭は自分と同じ匂いを感じた。
「じゃ、じゃあ、しりとりで勝負!」
「しりとりぃ?」
 孝昭があからさまに不満な顔で言う。
 恵が明らかに混乱してそう言ったのが分かる。
「いいの! じゃあ、私から行くわ! えっと、みかん!」
「………………」
 孝昭は何も言い返せなかった。
 見物人もしんとしてしまった。
「ほ、ほら、あなたの番よ! 『みかん』だから次は『ん』……あ!」
「お前の負けだ」
 孝昭は同情をありありと浮かべた目で恵を見つめる。
「ちょ、ちょっと待って! しりとりやめ!」
 恵が腕をぶんぶん振りながら叫ぶ。
「やめもなにも、もう終わりだ」
「終わってないっ! しりとりは冗談!」
 大声で言う恵。
孝昭はもう少し突っ込もうかと思ったが、顔を真っ赤にして涙目の恵をこれ以上責めることは出来なかった。
「本当はお父さん対決! どっちのお父さんが偉いか!」
 恵がびしっと孝昭を指差しながら言う。
 それと同時に見物人が口々に言う。
「帝さんのお父さんって、ミカド産業社長だったっけ?」
「思いっきり汚い勝負だな」
「っつーか、普通高校生になってまで親父対決なんてするかね?」
 好き勝手言う見物人。
「うるさい、うるさい、うるさーい。勝負だから仕方がないの!」
 恵が意味不明の反論をする。
「じゃ、早く! あなたから言いなさいよね!」
 恵は孝昭を振り返って言う。
「いいけどな。もう、どうでも」
 孝昭は頭をかいた。
「俺の父親は松島電機に勤めている。これでいいか?」
 孝昭はやる気なさそうに答える。









ジャンル学園コメディ
作 者道化童子
表紙絵水姫アトコ
サイズ新書
ページ数148
配布価格600円
配布開始10月10日 キャラコミin名古屋にて
以後イベントにて配布










ガラクタですが







心を込めて───












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